「キマるのは人間だけじゃない」覚せい剤で魚も狂ってしまうことが判明、最悪の場合は生態系に影響も

生活排水として出される家庭用洗剤や医薬品、化学物質等が排水処理施設を経由して河川を汚染してしまうという問題はよく知られていることです。しかし、排水に含まれるものがメタンフェタミンのような覚せい剤だった場合は魚の生態系に悪影響を及ぼす可能性があることが判明しました。

強力な覚せい剤として知られるメタンフェタミンは全世界で広く普及している違法薬物であり、体に取り込むと大脳の中枢神経を刺激することで強い興奮状態にすることが知られています。しかし、大量に体内に入れてしまうと幻覚を見てしまうほか、強い精神依存性があることや皮膚病等のさまざまな副作用があるため、世界中で禁止されている薬物です。日本では限定的な医療用途や研究用途でしか入手できません。

チェコ生命科学大学で生態学者のパベル・ホルキィ氏率いる研究チームは「メタンフェタミンにさらされたマスを使った実験を行い、魚も人間と同じように覚せい剤の中毒症状や禁断症状を示すことがある」ことが示されました。この実験ではメタンフェタミンを含ませた水に30匹のマスを8週間飼育。その後、これらのマスに対し真水かメタンフェタミン入りの水の水槽のどちらかを選択させた結果、大半のマスが後者の水槽に移動したようです。

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ちなみに、この実験は計60匹のマスを使って行われており、残りの30匹については8週間飼育する水槽にメタンフェタミンは入っておらず、その後の水槽選択でも大半のマスは覚せい剤入りの水槽は選びませんでした。このため、8週間メタンフェタミンにさらされ続けたマスは依存症のような状態に陥ってしまい、その後の水槽選択の場でもメタンフェタミン入りの水槽を選んでしまったようです。

なお、中毒状態に陥ったマスは正常なマスと比較して「ほとんど行動をしない」ことがわかっており、餌場に群がることや繁殖行為にもほとんど興味を示さなくなっていたとのこと。このため、排水にメタンフェタミンが含まれていた場合に、そこを泳ぐ魚が中毒状態に陥ってしまったとしたら、魚の生態系がおかしくなってしまう可能性があるとホルキィ氏は結論付けています。