「地球で最も速い動物は?」と聞かれたら、迷いなく「チーター」と答える人が沢山いるはずです。たしかに、チーターは陸上動物で最速の地位にある動物であることに変わりはありませんが、実際はチーターよりも速い動物が「いくつか」いるとのことです。
チーターといえば、最高速度で時速103キロメートルで走ることで知られており、競走馬などよりもはるかに速いスピードで走ることができます。この結果、チーターは世界最速の陸上動物の地位を得ることとなり、多くの人も「世界一速い」という印象を持つことになりました。
ロンドンの王立獣医大学で進化生物力学を研究しているジョン・ハッチンソン教授によると「クジラからハエまで474種類の陸上・海洋動物をモデルで分析すると、速度は体の大きさと大きく関係することが実証されました」と語り、動物のスピードは個体の大きさに合わせて増加していき、一定の大きさを上回ると逆にスピードが落ちてしまうことが明らかになったとのこと。大きくなればなるほど、加速にエネルギーが必要となり、逆に遅くなってしまうとハッチンソン教授は説明しています。同氏によると、チーターは「スピードの観点では中くらいに最適化された動物」であるようです。
チーターは陸上動物では最速と言えますが、海洋動物や鳥類を含めるとランクはかなり下がってしまいます。例えば、最も高速で移動できる動物ではないかと言われているのがハヤブサで水平移動時は時速100キロメートル前後ほどですが、急降下時の速度は時速322キロメートル以上と言われており、時速563キロメートルを記録したこともあるとのこと。しかし、実際のスピードに関して、正式な調査は行われておらず、本当のスピードは定かではないとされています。
水平移動の観点で見ると、ヨーロッパアマツバメは時速111キロメートル、ハリオアマツバメが時速169キロメートルほどで移動できると見られています。また、海洋動物で見ると、シロカジキが時速129キロメートル、バショウカジキは時速109キロメートルに達するのではないかと言われているそうです。
ハッチンソン教授は「しかし、これらほとんどの動物に関しては観察と推定による最高速度でしかなく、実際に計測されたものではありません」と語っており、正確なデータが存在していないとしています。当然、誰でも「これらの動物のスピード」を計測することはできますが、そのスピードが「本当に動物の本気のものか」「それ以上に速いスピードで移動できる条件があるのではないか」といったことが明らかではない限り、科学者は正確なデータであると納得しないでしょうと同氏は語っています。