NASAが「人類は既にタイムトラベラーである」と説明、その意図とは?

映画などの登場人物が過去にタイムトラベルをして、さまざまなトラブルに巻き込まれる様子を見たことがある人は多いはずです。当然、これらはあくまでもフィクションで「現代に生きている時点でタイムトラベルなんて経験できるはずがない」と思っている人が大半ですが、アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、既に人類はタイムトラベルを何らかの形で経験しているとのことです。

タイムトラベルと聞くと、簡単に過去に行ったり、10年、20年先の未来に行ったりすることを想像しがちですが、現実はそんなに甘くはなく、もっと小規模なものです。例えば、ハッブル宇宙望遠鏡を覗けば、過去の宇宙の様子を見ることができます。例えば、2022年4月初めにはビッグバンからわずか9億年後に存在していた星「WHL0137-LS」を観測することができており、地球にやってくるまで130億年以上過去の世界を見ることできるのです。ちなみに、この星は130億年前に爆発してなくなったと考えられています。

また、NASAが実際に行った実験によると「移動時間が速ければ速いほど、時間の流れがゆっくりになる」ことが実際に検証されています。この実験では地球の地表に時計を置き、地球の時点と同じ方向に進む飛行にもう一方の時計を乗せるというものです。そして、飛行機が地球を一周した後、時計を見ると、飛行機に乗っていた時計の方がわずかに時間が遅れていることが確認されています。この計算で行くと、国際宇宙ステーション(ISS)で1年過ごした宇宙飛行士のスコット・ケリー氏は同じ期間を地球上で過ごした双子の弟のマーク・E・ケリー氏よりも0.01秒若くなっていることが明らかになっています。

そして、このように空を飛んでいるものが時間が遅くなるということは私たちの身近にあるGPSもタイムトラベルに関係してきます。GPSは地球の軌道上を回る人工衛星に依存しており、この機能を使用するためには少なくとも4つの衛星が必要です。これらを用いることで、自身の位置の正確な情報を調べたり、行きたい場所へのナビゲーションができたりするのです。

しかし、これらの衛星は地上から2万キロメートル上空にあります。このため、さきほどの例で挙げたように地球上と衛星の位置では時間の進み方に差が生じています。つまり、GPSを使用するためには地表と衛星の間に生じる時間差も考慮に入れて、位置を計算しているのです。このため、記事作成時点の私たちは映画や小説のようなタイムトラベルはできないですが、タイムトラベラーのようなことができているとNASAは説明しています。