「YouTubeをより快適に」Googleが独自開発した「Argos」プロセッサの実力とは

動画共有サービスで圧倒的なユーザー数を抱えるYouTubeですが、サービスの品質も他サービスの追随を許さないほど飛び抜けています。このようなサービスとなると、同社のサーバーには莫大なネットワークトラフィックが発生するほどのアクセスが集中するため、その負荷に耐えられるような設計が必要です。そこで、運営元のGoogleはYouTubeがこのような負荷に耐えられる工夫を施した「Argos」プロセッサを開発し、実際のサービス上で使用しています。

Googleによると、記事作成時点で数千もの「Argos」プロセッサがYouTubeのサーバー上で稼働しているとのこと。Argosプロセッサはいわゆるビデオカードに相当しており、スマートフォンなどの携帯用端末のように「データ利用量に制限のある環境」でも最高クオリティの動画を提供できる工夫がされています。

画像: CNET(Google提供画像)

YouTubeでは1分あたり「500時間分の動画」がアップロードされています。Argosプロセッサでは膨大な量の動画ファイルを様々な圧縮形式に変換したり、画面サイズに対応させるトランスコーディングを行っています。

YouTubeのサーバーには1台あたり、2基のArgosプロセッサを搭載しており、従来のサーバーと比べても20〜33倍以上の性能で動画を処理することが可能です。これにより、これまで4K映像をYouTubeで視聴できるようになるまで数日かかっていたものが、数時間で完了できるようになったとのことです。

また、ユーザーがYouTube上に動画をアップロードすると、同サービス内で元動画をベースに1080pや720p、360pなど様々な解像度の動画を作成します。この処理もArgosプロセッサが行います。低い解像度の動画を作成するのは「モバイルネットワーク回線の速度が低い地域」や「ネットワーク使用量に制限のあるユーザー」に向けた対応するためです。実際に元動画から作られる解像度のバリエーションの数は10〜15になりますが、これらも短時間で可能とのこと。

記事作成時点において、YouTubeのサーバー上で稼働しているArgosプロセッサは2世代目です。2世代目ArgosではGoogle、Mozilla、Cisco、Microsoft、Amazonなどが協力して作り上げた動画圧縮コーデックの「AV1」が利用可能になっています。AV1はこれまで使用されていたデータ量が少なく動画品質の良い「VP9」よりも優れています。

このコーデックを使用することで、これまで1080pまでの解像度の動画再生しかできなかったネットワーク環境でも容易に4K映像を再生することが可能です。記事作成時点でAV1に対応しているのはChromeやFirefox、Brave、Edgeなどの一部のWebブラウザやNetflixなど動画サービスでも利用されており、徐々に普及しつつあります。これが、Appleでも採用されるようになれば、Googleが開発した2世代目Argosプロセッサの真価が発揮されることになると思われます。