反ワクチン接種を謳う活動家たちが「新型コロナワクチンが危険である」という証拠の1つとして、TikTok上などに公開されている「ワクチン接種後の腕に磁石がくっつく」というムービーを取り上げて警鐘を鳴らしています。イギリスの国営放送BBCは磁石の研究を行う物理学者の意見を公開し、腕に磁石がくっつくなんてことは物理学的にありえないと反論しています。
BBCの記者であるジャック・グッドマン氏は「根本的なこととして、新型コロナワクチンには磁気を帯びる可能性のある金属は一切含まれていません」と語り、記事作成時点で世界的に接種が進んでいるワクチンにはそのようなものが入っていないとしています。ちなみに、新型コロナ以外のワクチンには人体に影響が出ない程度で少量のアルミニウムが含まれることがありますが、この金属についても磁気を帯びていません。
そして、グッドマン氏はアメリカ国立強磁場研究所の副所長を務めるエリック・パーム氏から、これらのムービーについての見解を聞いています。パーム氏は「新型コロナワクチンの注射針は1ミリメートルのさらに数分の1の大きさしかありません。そんな穴から、仮に『強力な磁性粒子』を体内に流し込めたとしても、粒子が小さすぎるため、磁石を皮膚に貼り付けておくだけの磁力はありません」と説明し、腕に磁石がくっつく可能性を否定しています。
また、パーム氏は「そもそも、コインを肌に貼り付けるのは誰でもできます」として、皮膚の表面の油分や表面張力を利用して貼り付けることも可能だと説明。さらにムービーなら編集等でいくらでもごまかせることができるため、磁石に粘着性のある物質をつけて、腕にくっつけているだけの可能性が高いとパーム氏は指摘しています。
なお、TikTokやFacebook、YouTube等で拡散された「ワクチン接種後の腕に磁石がくっつく様子を撮影した」ムービーは何百万回という再生数を稼ぎ出しています。そして、これらのムービーは反ワクチン接種活動家によって、拡散されているようですが、その結果としてムービーには多くのコメントが寄せられて大炎上し、ムービーを削除する投稿者も出てきています。
実際にそのようなムービーを投稿し、削除したことのあるエミリーさんは「冗談で投稿したつもりが、思いのほか反響が大きく、あまりのコメント量に驚きました。私のしたことが原因で『ワクチンを打ちたくない』という人がたくさん出てくるのはまずいと思い、ムービーを削除しました」と語り、実際に磁石が腕にくっつくようなことはなく、嘘の投稿であったことを認めています。パーム氏の見解などBBCが取材したムービーは以下から確認することができます。