2022年1月に航空宇宙メーカーのSpaceXが打ち上げたロケットと見られるものの一部が月の裏側に衝突することが報道されましたが、2022年2月14日にこの宇宙ゴミ(スペースデブリ)が中国の嫦娥5号T1のものであることがわかりました。なぜ、ただ宇宙を漂っているだけのゴミが中国のロケットのものと特定できたのか、アリゾナ大学の准教授が説明しています。
アリゾナ大学で宇宙科学、惑星天文学等の分野の准教授を務め、Space Domain Awareness研究所の主宰者の一人でもあるヴィシュヌ・レッディ氏によると「物体の物質の構成を明らかにできるスペクトル情報から、SpaceXと中国の類似したロケットをそれぞれ比較したところ、後者のものが一致しました」と語っており、「可能性が高いというような話ではなく、同一のものであると確証を持って言えるぐらいの確度がある」とのこと。
このロケットの一部は2022年3月4日に月の裏側にあるクレーター「ヘルツシュプルング」付近に衝突すると予測されています。Space Domain Awareness研究所の観測によると、この宇宙ゴミは2014年に打ち上げられた嫦娥5号T1ロケットの1段目のブースターだと考えられているそうです。
中国から打ち上げられた当時のロケットにはロケットブースターを安全な場所に落とすシステムが搭載されていませんでした。このため、2021年5月には長征5号Bロケットのブースターが地球のどこに落ちるかがわからない状態となり、世界規模で中国製ロケットの安全性について議論を巻き起こすことにもなりました。
今回のように宇宙ゴミが月に衝突することは可能性の面で見ると、かなり稀ではあるのですが、安全システムが搭載されていないことで多くの問題を引き起こしてしまいます。欧州宇宙機関によると、記事作成時点で地球の軌道上にある宇宙ゴミは2万8000個以上存在し、その総重量は9300トン以上にも及ぶとのことです。