「地球に届く太陽光を10ミクロンに集約したエネルギー」の超絶パワーを持つレーザーが開発される

宝石の加工や医療など幅広い分野で使用されているレーザー技術ですが、その技術は日々進歩しており、記事作成時点ではとんでもない高出力のレーザーが生み出されました。このレーザーは「地球に降り注ぐ全ての太陽光を10ミクロンの範囲に集約したとき」と同等の「とんでもないエネルギー」を持つとのことです。

このレーザーを生み出したのは韓国の光州科学技術院で教授を務めるナム・チャンヒ氏率いる研究チームです。研究チームはこのレーザーの開発までに10年の歳月がかかっており、その苦労の甲斐もあって、1023W(ワット)を超える出力のレーザーを開発するのに成功したとのこと。ナム氏は「1023 W/cm2のレーザー強度というものは、地球に降り注いでいる全ての太陽光を『赤血球1個の大きさ』に集約したときと同等の強度になります」と語っています。

同氏は続けて「この高出力のレーザーは宇宙の初期フェーズである『超新星爆発』やブラックホール上で発生することが示唆されています。こういった宇宙の根幹部分の研究にも私達のレーザーは貢献できると思います」と述べており、これまで理論ベースで語られていた現象をシミュレーションするのに「新しいレーザービーム」が活用できるとしています。

このレーザーの用途は天文学に限らず、実際の医療現場でも役に立つとのこと。特にがん治療で用いられている「陽子線治療」は水素の原子核の陽子を加速器に通して、がん細胞に照射して治療する仕組みとなっています。しかし、この治療を行うには高価な「放射線シールド」が必要となり、治療費自体が高額になってしまうのが欠点です。

ナム氏は「陽子線を照射する代わりに今回開発したレーザービームを使用できると考えています。この治療法の安全性が確保されれば、コストパフォーマンスもよくなり、多くの患者さんにとっても喜ばしいことになるはずです」と語り、新しいレーザービームを用いたがん治療にも応用できる可能性があるとしています。