肘を打ったとき「電気ショックのような痛み」が走る理由とは

肘を壁などに直接ぶつけると、通常の痛みとは異なる「電気ショック的な痛み」を感じます。この痛みは特殊な感覚であり、かなり不快なものなのですが、なぜ通常の痛みと異なるのか、Live Scienceで解説されています。

結論から言うと、肘を直接打ち付けたときに走る独特の痛みは骨ではなく、「神経」を直接叩いているから発生するものなのです。人体解剖学の観点で仕組みを見ると、この部分は尺骨(しゃっこつ)神経と呼ばれる部分で言わば腕の中で最も重要な神経です。

尺骨神経は背骨から首を経て、肩から肘までの骨である上腕骨の溝に沿って通っています。肘を過ぎた後はそのまま前腕部分の親指側と小指側の骨を通り、手首につながっているのです。このため、尺骨神経は小指や薬指の感覚を認識したり、手の動きを制御したりする役割を担っています。

本来、神経の大部分は骨や筋肉・脂肪によって守られているのですが、肘関節の(上腕部と前腕部の接合)部分では尺骨神経は肘の溝の部分を通ってはいるものの、完全に守られているけではありません。尺骨神経が通る溝部分の上部は柔らかい皮膚と靭帯のみでしか覆われていないため、事実上、神経が露出している状態に近いのです。

このため、肘を打ち付けるとリアルな神経の痛みを味わうこととなり、「電気ショックのような痛み」が走ります。神経が直接刺激を受けるため、感じる痛みの衝撃は大きいものの、通常は数分程度で収まります。しかし、逆に考えれば数分間は痛みが継続するので、よくぶつける人はエルボーガードが必須になるのかも知れません。

ちなみに、他の哺乳類も同様の構造を持っていますが、人間と同様の問題を経験することはありません。これらの動物はこの神経を強い筋肉で覆っているため、「電気ショックのような痛み」を回避することができるのです。