中国政府は2020年に実施した国勢調査の結果を発表しました。この国勢調査は10年に一度行われるもので非常に大規模な調査が行われることで知られています。今回行われた国勢調査で中国の人口増加率が1950年以降で最も低くなっていることが明らかとなりました。
1970年代の中国の一般的な家庭は労働力を増やすため、子どもをたくさん作る傾向があり、結果、人口増加率が20%を超えていました。この人口急増は飢饉を生じさせてしまう可能性があります。このため、中国政府は「一人っ子政策」を実施し、出生率の低下と人口増加率を引き下げてきた歴史があります。
しかし、その後は出生率が思った以上に低下したことに危機感を抱いた中国政府は2014年に「一人っ子政策」を取りやめ、「二人っ子政策」を実施。出生率の向上を目指した政策を行いましたが、2020年の国勢調査の結果によると、中国は2010年から2020年の10年間で人口が5.38%増加し、14億1000万人となったことが発表されました。しかし、この人口増加率は中国の国政調査が開始された1953年以来、最低の数字です。
2020年の中国の女性1人あたりの出生率が1.3人で日本やイタリアなど高齢化が進んでいる国と同等水準になっていることも明らかになっています。専門家によると、「この傾向は中国が『高齢化社会』に踏み出しているところであり、政府は中国企業の定年退職年齢を引き上げる政策を取るかもしれない」と語り、日本のように定年を引き上げて、年金支給を遅らせる対応を取る可能性を指摘しています。
また、北京のシンクタンク「Center for China and Globalization」に務めており、人口統計を専門にしている黄文正氏は「中国が出生数が大幅に減少しており、今後数年で人口減少に転じることになる」と述べ、近いうちに人口減少の方向に進むとしています
なお、今回の国政調査で65歳以上の高齢者の割合は13.5%となっており、2010年の調査時の8.87%を大きく上回っています。このため、今後の中国は高齢化社会の道を辿ることになり、労働人口減による「生産性低下」と「社会保障の負担」に悩まされることになるとみられます。