中国の最高裁判所は同国内のテクノロジー企業における勤務形態として慣例化しつつある「996」(週6日、午前9時~午後9時までの12時間勤務)を違法であると認定したとのことです。
記事作成時点の中国における労働法では「労働者の残業時間は月36時間を超えてはいけない」とされています。しかし、中国のテクノロジー企業では「週6日、午前9時から12時間勤務」を採用しており、一部の人々はこれを名誉の象徴であるとしていたようです。
かつて、Alibabaの創業者であり、ソフトバンクの取締役も務めたことで知られる馬雲(ジャック・マー)氏は「996で働けることは非常に幸せなことです」とインタビューで語っていたことがあります。同氏は「Alibabaに入社したいのであれば、1日12時間働く覚悟が必要です。それができないようであれば、入社する必要性が皆無だ」と続けていました。
なぜ、このような労働形態が信仰されていたかというと「アメリカの大手テクノロジー企業と競争をするには圧倒的な労働力が必要であるという」考え方からきています。つまり、アメリカ企業と比較して、中国企業は歴史的にテクノロジー関連には後発となる立ち位置であり、世界トップを走っている技術力やサービスの質を高めて競争するには「質はもちろん、(作業)量で上回るしかない」のです。このため、中国では非合法ともいえる996の働き方が支持されており、それを指摘する可能性のある役人などには賄賂等で黙認させていたと見られています。
しかし、996の勤務形態を採用していた企業で2人の労働者が過労と自殺で亡くなったことで、中国に転機が訪れました。TikTokを運営するByteDanceやその他の企業では2021年8月1日から週末の残業を廃止する措置をとるようになったそうです。
そんな状況下で行われた裁判では「原告の労働者が早朝に会社のトイレで意識を失い、そのまま心不全で死亡した」問題について扱われ、裁判所は企業に対し約40万元(約680万円)の賠償金を支払うよう命じています。こういったことからも今後の中国では「996」の勤務形態について、厳しい目が注がれることになりそうです。