顔認識による犯罪者識別、「化粧」で突破できてしまうことが判明

iPhoneなどの顔認証など、AI技術を用いた顔認識機能が身の回りに存在し、犯罪者識別などにも利用されています。そんな中、記事作成時点における「これらの顔認識を犯罪者識別」が化粧をするだけで別人と判定できてしまうことがネゲヴ・ベン=グリオン大学の研究で明らかになったとのことです。

犯罪者識別などに顔認識技術が使用される例としては、空港などで「犯罪者の入国を阻止するための水際対策」などが挙げられます。犯罪者識別を行う場合には「あらかじめ対象の顔写真を『ブラックリスト』として学習させておくこと」でカメラの前を通った人物が「ブラックリスト上の人物」と一致すれば、警備員に連絡するという方法で対応することができます。

そんな中、ネゲブ・ベン=グリオン大学の研究者が行った実験では20人の被験者を用意し、全員を顔認識システムのブラックリストに登録。その後、研究者は「YouCam Makeup」というアプリを用いて「AIが被験者の顔の中で最も識別しやすい部分」に別人と認識できる化粧を施した画像を保存しました。そして、メイクアップアーティストが画像の内容に従って、実際の被験者の顔に「より自然な感じになるように」化粧を施しました。

化粧を施された被験者が顔認識システムの前を通ると、「何も化粧をしていない状態」は被験者を認識した映像の47.6%のフレーム(コマ)で検出されたのに対し、「研究チームが提案した方法で化粧した場合」が1.2%、「研究者の指示なくランダムに化粧した場合」が33.6%という結果となりました。このため、研究チームの指摘した方法では「ほぼ誤検出レベル」の検出率になっているのです。実際に施したメイクと被験者が歩行してカメラに検出されない様子はYouTubeのDodging Makeup Attackが公開しているムービーで確認することができます。

化粧などで顔認識を逃れる方法は他にもあり、2010年にCV Dazzleプロジェクトとして、被験者の顔に迷彩のようなものを施すことで逃れる方法が示されています。ただし、この方法はAIは騙せますが、警備員が見ると「あきらかに違和感を持つ」ものであるため、現実的な回避方法として選択できるものではありませんでした。今回の方法はあくまでも「自然なメイク」であり、違和感自体はほぼないもので、こちらの方が実用性が高いと言えます。

ペンギン議長の一言
顔認識技術は日進月歩で進化しているので、このような方法がいつまでもできるとは限りませんが……