世界初「ハンセン病にかかった」野生のチンパンジーが発見される

画像: Nature

イギリスとドイツの研究チームは「ハンセン病」にかかった野生のチンパンジーが存在することを確認しました。ハンセン病は一般的に人間以外の霊長類以外にはかからないとされており、過去に飼育されているチンパンジーでの症例が報告されましたが、野生のチンパンジーでの症例は世界初とのことです。

研究チームの報告では西アフリカにあるギニアビサウとコートジボワールの2カ国で生息する(全く異なる集団に所属する)野生のチンパンジーを発見した、一度に2例もの個体を確認したとしています。また、該当のチンパンジーの便を遺伝子解析したところ、ハンセン病の原因菌であるらい菌が確認されており「ハンセン病にかかっている」ことを正式に確認したとのことです。

以前には飼育下にあったチンパンジーがハンセン病にかかる事例は報告されていましたが、野生のチンパンジーでの発症例は世界で初めてであり、アフリカにおける人間以外のハンセン病の症例も初めてです。論文の筆頭著者であるイギリスのエクセター大学で講師を務めるキンバリー・ホッキングス氏は「飼育下のチンパンジーの発症原因は不明であり、どのような感染経路で発症したのかはわかっていません」と過去に飼育下の環境で確認された事例でも感染源は不明のままであるため、今回の野生のチンパンジーがどのような経路で発症したのかについても明らかになっていないと述べています。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、ハンセン病にかかると、皮膚に変色した斑点ができるほか潰瘍、腫れなどの症状がは発生し、視力障害や筋力低下、一時的な麻痺などの症状も起こるとのこと。また、ハンセン病に感染して何の治療も行わなかった場合は『失明』『麻痺』『顔面の変形』『手足の指が短くなる』などの症状が出ることがあります。しかし、この病気はすでに治療可能であり、初期段階から治療することで、対処することが可能です。

画像: Flickr(moyerphotos)

らい菌を保有する主な保有元は人間ですが、アメリカ大陸に生息するナインバンドアルマジロやイギリスに生息するアカリスも保有しいることも知られています。これまで、らい菌を保有している生き物は限定的と見られていましたが、今回発見された野生のチンパンジーはアフリカに生息する個体であることから、論文では「野生動物の間でらい菌を保有する個体が増えてきているのかもしれない」ことを示唆しています。