「田舎の老人が与党を支える」日本の選挙制度の問題点をイギリスBBCが解説

画像: BBC

2021年10月31日に日本では衆議院議員選挙の投開票が行われます。日本は第二次世界大戦後、そのほとんどの歴史において、自由民主党(自民党)が与党を担う立場となっている状況です。イギリスのBBCは自民党が長い歴史のほとんどで政権を担ってきた理由を「田舎に住む高齢者が与党を支えている」ところにあるとして、日本の選挙制度の問題点を解説しています。

実際にBBCが公開しているムービーは以下から確認することができます。以下の段落からBBCがムービー内で解説していることを説明するため、以降はBBCの記者目線で見た日本の選挙制度の解説です。

直近の65年間のうち6年間を除くと、日本はずっと自民党によって支えられてきました。このため、2021年10月31日の選挙でも自民党が勝利することは間違いないと考えられています。しかし、自民党の政策の全てが国民に受け入れられているわけではなく、またカリスマ性の高い総理大臣がいたわけでもないので、国民人気自体はそこまで高くないというのが現状です。

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では、自民党がなぜこのような大成功を収めることができたのでしょうか。それは日本の田舎に秘密があるのです。ここは人口5000人ほどの小さな町で、住民の多くは高齢者、まさに自民党の牙城といえるのです。

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私たちは老人の多いこの田舎町を取材していたところ、期日前投票で自民党に投票する予定であると語る夫婦と出会うことができました。

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男性は「野党の場合は外交、それから防衛、そういうものが全然ごちゃごちゃです」と語り、野党の経験のなさが信用できないとして自民党に投票すると説明。また、この男性の奥さんも「私も主人とおんなじです」答えており、同様の意見から野党は信用できないと感じているようでした。

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自民党が田舎で強い人気を得ている理由の1つに「田舎のインフラ整備」に巨額の税金を投入するようにしてきたことが考えられます。私が通っている道の反対側の谷には非常にきれいな道路がありますが……

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数年前に自民党が「もう1つ道路を作る必要がある」と判断し、そのために新しいトンネルまで作られました。正直、田舎にこんなものを作っても経済的なメリットは「ほとんどない」ようにしか感じませんが、とても素晴らしいインフラです。このような「大金を注ぎ込んでくれる」なら雇用も生まれますし、票も入りますね。

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それでは日本の野党はどうなのでしょうか。東京の街角では共産党の候補者が選挙演説をしていました。

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日本では民家を一軒一軒訪問するような活動は認めておらず、候補者は街中で演説をする以外に自身をアピールすることができません。しかも、日本には野党が9党もあり、自民党を支持しない人は9つの党のいずれかに入れることになります。当然、票は分散されるので野党が勝つ可能性は極めて低くなります。さらに与党のトップは毎晩のようにテレビニュースに登場するため、知名度が上がりやすくなり、ますます選挙で有利になります。

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次に若い有権者の間で「野党」が認知されているのか、1人の女性に「日本で一番大きな野党の党首」の名前を知っているか尋ねてみました。

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女性は「顔は知ってるんですが、わからないですね」と回答。また、BBCの記者は「選挙に行くかどうか」「選挙に興味はあるか」の質問をしましたが、女性は「ないですね」と語り、選挙に興味自体も持ってないようでした。

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このように都会に住む若者は投票しないどころか「誰に投票していいかもわからない」というわけです。

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さらに日本の選挙制度には一票の格差という問題もあります。2021年現在では日本の有権者の大半は都市部に住んでおり、人口の大部分が大都市圏に集中しているのです。しかし、日本の選挙制度は人口比率に応じた仕組みになっておらず、都市部の選挙区で当選するには田舎の選挙区よりも多くの票が必要であり、都市部と田舎で1票の重みが全然違うのです。

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こういった現状は日本の総理大臣である岸田総理にとっては朗報でもあります。なぜなら、岸田首相が自民党政権を維持するには都市部に住む大多数の国民の支持を集める必要はなく、少数の人口しかいない地方の支持だけを集めて、田舎の国会議員をたくさん集めるだけで済むからです。