2021年11月9日にアメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)は韓国の現代(ヒョンデ)自動車とその傘下の起亜(キア)自動車の安全問題について、内部告発を行った韓国人の元エンジニアに対して2400万ドル(約27億円)の報奨金を支払ったと発表しました。この報奨金は現代自動車と起亜自動車がアメリカに支払った罰金から賄われているとのことです。
内部告発を行った現代自動車の元エンジニアであるキム・グァンホ氏の代理人を務めている法律事務所「Constantine Cannon」によると、当時韓国の首都ソウルで働いていた同氏は2016年に安全問題を訴えるため、アメリカを訪れたそうです。その際、キム氏は現代自動車と起亜自動車が製造していたシータ2エンジンには「エンジンが焼き付く」設計上の欠陥を抱えており、時には火災が発生することもあったと報告しています。
この報告を受けたNHTSAは2020年11月に現代自動車と起亜自動車に対して「両社が製造していた自動車のエンジンに関する安全上の問題を隠匿し、リコールをわざと遅らせた」ことを認めさせ、対象となった160万台のリコールを実施することを約束させるとともに総額2億1000万ドル(237億7000万円)の罰金を科し、キム氏にも2400万ドル(約27億円)の報奨金が支払われることになりました。
キム氏は「シータ2エンジンを搭載した自動車を所有しているユーザーを守るために内部告発を行いました。しかし、本来なら内部告発にはリスクを生じるものですが、このリスクが正当に補償されたことを嬉しく思います」とコメントしています。
同氏は続けて「現代自動車では『品質を誇りにする』ということをキャッチフレーズにしていました。そんな状況にあるにも関わらず、現代自動車と起亜自動車はエンジンの欠陥問題を隠匿している状況だったため、両社に正しい道を辿ってもらうため、私が内部告発を行いました」と語っており、今回の内部告発が現代自動車以外にも業界全体の安全性向上につながって欲しいと述べていました。