女性が男性よりも長生きな理由とは?

厚生労働省の発表によると、2020年7月31日に発表された2019年の日本の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳となっています。この傾向は日本だけでなく、世界的にも女性の平均寿命の方が高くなっているのですが、この理由について南デンマーク大学で人口統計学の准教授を務めるヴァージニア・ザルジ氏が説明しています。

女性の方が寿命が高い理由について、主に2つの要因があるとザルジ氏は説明しています。まず、1つ目の原因は生物学的なものです。あくまでも、シスジェンダー(性別と性同一性が一致していること)が前提ですが、性ホルモンの違いであるとみられています。女性の場合、男性と比較して体内のエストロゲンの分泌量が多いため、心血管疾患などのさまざまな病気に対する保護効果があることが知られています。

一方、男性の場合はテストステロンの分泌量が多くなる傾向があります。この濃度が高くなると、男性の場合は「前立腺がん」のリスクが上がり、またテストステロン分泌量の多い女性の場合は「子宮内膜がん」「乳がん」、などの疾患のリスクが高まることが2020年の研究で明らかになりました。また、テストステロンは「危険な行動」「攻撃性の高さ」にも影響し、若くして死亡するリスクを高めてしまうのです。

また、遺伝的な要素も関係しており、人間には2つの性染色体があります。女性なら2本のX染色体を持ち、男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持っています。これらの染色体の違いは足の有無であり、Y染色体に関してはX染色体と比べて足が少ない構造となります。このため、Y染色体は遺伝物質が不足している形となり、出血性疾患の血友病や筋肉が徐々に弱ってしまうデュシェンヌ型筋ジストロフィーのリスクが高まってしまうのです。

このように女性の持つ「生物学的な利点」により、女性は男性に比べて平均寿命が高くなっているのですが、どのように見積もっても2年程度しか差はないそうです。しかし、ザルジ氏は「平均的に女性は男性よりも4、5年長く生きることができます」と語っており、他にも女性優位な理由があるようです。

ザルジ氏は女性が長生きする2点目の理由として「社会的要因」を挙げています。世界銀行のデータによると、男性の35%がタバコを吸っているのに対し、女性の喫煙率は6%に留まっているとのこと。また、女性の方が健康的な食事に傾倒することが多いのに対し、男性は脂肪分の多い食事を好む傾向があります。同氏は「これらの違い」から平均寿命の差が5年程度に膨らんだと見ているそうです。