香港警察が「中国の安全を脅かした」として民主主義を謳う新聞社に大挙して押し寄せる

画像: AppleDaily

香港で唯一の民主主義を支持する新聞社であるApple Daily(蘋果日報)が諸外国に対して「中国に制裁を課すことを求める記事を掲載したこと」について、香港警察は2021年6月17日に同社を家宅捜索し、国家の安全を損なう行為を行ったとして、幹部2人とスタッフ3人を逮捕しました。

同日の朝7時30分頃、数百人の警察官が香港の将軍澳にあるAppleDailyの本社に家宅捜索に入り、オフィスの入口を封鎖。同社のスタッフは食堂にしか入ることが許されず、デスクに戻ったり、家宅捜索の様子を撮影したり、ストリーミング配信したりすることは全て禁止されたとのことです。

同日に行われた記者会見で香港警察は「AppleDailyがインターネットおよび新聞等の印刷物において、諸外国に制裁を求める記事を30本以上掲載しました。これらの記事は『国家の安全を著しく害するもの』であり、諸外国と共謀している可能性を示すものです」と語り、今回の家宅捜索や幹部らの逮捕が中国にとって正当な行為であることを強調しています。

また、中国政府は「警察の国家安全部はジャーナリズム資料の捜索と押収する権利を含む『国家安全法の第43条1項』に基づいた捜索令状を持って家宅捜索を行った。この法律は当局が『犯罪の証拠を含むであろう敷地、車両、船舶、航空機、電子機器などを捜索できる』権利を有している」とコメントを発表しています。

画像: Sky News

しかし、今回の家宅捜索と逮捕について、香港ジャーナリスト協会は強い懸念を示しているようです。同協会で会長を務めるクリス・ヤング氏は「ジャーナリズムの何が国家安全法に抵触するのか全く理解できないです」と述べており、香港警察がAppleDailyの取材した資料を押収する行為に疑問を呈しました。

なお、AppleDailyが家宅捜索を受けたのは今回が初めてのことではありません。同社は中国で国家安全法が施行されてから、数週間後の2020年8月にも家宅捜索を受けており、そのときにも同社の創業者であるジミー・ライ氏が逮捕されています。