中国で行われている新型コロナの肛門PCR検査の必要性に国内外の専門家が困惑

2020年春頃から日本で蔓延することになった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、
2度目の緊急事態宣言による効果もあって、徐々に感染者数の沈静化が見えてきています。
しかしながら、依然として海外の多くの国では他国からの入国者に対して厳しい水際対策が続いており、中国では鼻腔・咽頭のPCR検査の他に肛門からも検体を採取して検査を行っています。
しかし、肛門のPCR検査は「そもそも意味がないのではないか?」と疑問視する現地研究者もいるようです。

Why is China giving travelers anal tests for COVID-19? | Live Science

中国では一部都市への旅行者に対して、通常の鼻腔・咽頭PCR検査に加えて肛門PCR検査を受ける必要があります。
しかし、これは中国国籍の人のみならず、全ての人が対象となっており、日本大使館やアメリカの外交官などは中国政府に抗議を行っています。

これらの意見に対し、北京の感染症医師のLi Tongzeng氏は「新型コロナに感染した人が無症状や非常に軽微な症状しか出なかった場合においては通常のPCR検査が意味をなさない可能性がある」と語っており、肛門PCR検査の必要性を訴えています。

さらに同氏は「一部の感染者は上気道のよりも排泄物や肛門の方がウイルスが残留しやすく、PCR検査でも陽性となりやすいことがわかっています」とのことで、肛門でのPCR検査を追加することで「偽陰性の患者」を見つけやすくなると続けています。

しかし、肛門でのPCRの検査について、武漢大学で病原体生物学部の副所長を務めるYang Zhangqiu氏は次のように語っています。
「たしかに、患者の排泄物を検査することで陽性と診断されることはありましたが、それは消化器系を介して感染したことを示す根拠はありません」

これは2021年1月に同氏が発言した内容ですが、本記事作成時点ではウイルス感染を広めないことを主目的とした新型コロナのPCR検査には鼻腔・咽頭で行うのが最も効果的であることがわかってきています。

また中国国外の専門家も次々と「肛門検査で新型コロナ陽性と診断されても、鼻腔・咽頭の検査で陰性ならば感染拡大が起こる可能性は低い」という意見も多く、中国の肛門PCR検査の必要性を疑問視しています。