仮に自分が宇宙飛行士で誤って、宇宙船のエアロックから生身で宇宙空間に放り出されたとき、どうなってしまうのか想像したことがあるという人も多いはずです。では実際に人体が真空状態の宇宙空間にさらされた場合にどうなるのか、アメリカ航空宇宙局(NASA)で宇宙飛行士の健康管理を目的とした医師クリス・レーンハルト氏が説明しています。
人体が生身の状態で宇宙空間に放出されたときの様子はハリウッド映画等でも描かれていることがあります。映画の中では一瞬で凍死したり、爆発したりするような様子が描かれていますが、それらの表現は大げさではなく、似たような現象が発生します。
宇宙は地球とは異なる真空状態の空間です。一般的に液体が沸騰して気体になる温度は大気圧の影響を受けます。しかし、宇宙には真空で大気がほとんどない状態であることから、液体の沸点は地球上よりも大きく下がってしまうのです。レーンハルト氏は「人体の60%が水でできているのは大きな問題です」と語っており、宇宙空間では体内にある液体が一瞬で沸騰して気体に変化するため、体内の組織が膨張し始めるとのことです。
同氏は「当然ながら、人間はこの状態に耐えられず、2分以内に死に至る可能性が高いです」と述べています。NASAによると、真空の宇宙空間に人体がさらされると肺からも空気が抜け、その後は体内に残留しているガスや水分も蒸発し、そのまま死に至るとのことです。以下のムービーはNASAとは関係ないですが、YouTubeのVAIENCE バイエンスで宇宙に生身の状態で放り出されたときにどうなるかについて、日本語で簡単に解説していますので、こちらを確認するものアリかと思います。
水分が蒸発した後、人体は徐々に凍りついていくことになるのですが、これは温度の仕組み影響します。基本的に温度は原子や分子が移動するために必要なエネルギーそのものです。しかし、宇宙空間にはそのような原子や分子がほとんど存在しないため、そういった移動は発生せず温度は低い状態。このため、人間が宇宙空間に生身で投げ出され、体内の水分が蒸発した後は体が冷やされ、凍ってしまうと考えられています。