過去1万年の間に「飼い猫の脳」が異常なほど小さくなっていることが判明、その理由とは?

2022年1月26日付でRoyal Society Open Scienceに発表された論文で現代社会において、一般家庭で飼育されている猫が最も近い祖先として知られるリビアヤマネコヨーロッパヤマネコの脳と比較したときに、過去1万年ほどの間で大きくサイズダウンしていることが明らかになったとのことです。

この研究はオーストリアのウィーン獣医学大学で動物福祉科学研究所に務めるラファエラ・レッシュ氏率いる研究チームによって調査されたもの。研究チームによると「脳のサイズが小さくなっても現代の飼い猫が極端に頭が悪くなったということではない」と論文内で述べています。

まず、脳が小さくなった原因として研究チームが挙げている仮説では「飼い猫が極端なストレスにさらされる環境で育つことがなくなったことで、脳の発達の仕方に影響を与えた可能性がある」と述べています。

一般的な飼い猫は狩猟や別の大型の動物に狙われるというような環境下で生活を行っていないのが現状。このため、そういった環境下で生活していたときと比較して「警戒心や恐怖心、相手を威嚇する」といった行動をとる必要がほぼなくなったことで、脳の縮小が発生したのではないかと研究チームは考えているようです。

実際に論文には「飼い猫は彼らの祖先とされるアフリカやヨーロッパのヤマネコと比較して、頭蓋の大きさが25%ほど縮小している」と記載されており、野生の猫と飼い猫の交配によって生まれた猫の場合は「頭蓋の大きさが飼い猫と野生の猫の中間程度になっっていた」ことも明らかになっていました。

この現象は猫にだけ発生しているものではなく、一般的に羊や犬、ウサギなど、家畜や家で飼育される動物に共通して同様の現象があるようで、研究者は「これらの動物と野生動物の交雑により、野生種の生態系にも影響が出る可能性」を指摘しています。