エルサルバドルの「ビットコイン法定通貨化」にIMFが待ったをかける

エルサルバドルと言えば、世界で初めてビットコインを法定通貨として採用した国として知られており、2021年11月20日に同国のナジブ・ブケレ大統領は自国の火山を利用してビットコインのマイニングを行う「ビットコイン・シティ計画」を発表し、世界中を驚かせました。そんな中、国際通貨基金(IMF)は依然として反対の姿勢を見せており「金融リスク、消費者リスクの観点からビットコインの法定通貨利用をやめるべきだ」と勧告したとのことです。

IMFはビットコインをはじめとした暗号通貨が効率的な支払いを促進するのに非常に有用であることを認めていますが別の問題を抱えていると指摘。IMFの声明では「ビットコインは価格変動の幅が非常に大きく、これを法定通貨として使用した場合は『消費者保護』『金融の健全性や安定性』に大きなリスクを伴います」と述べており、財政面で偶発債務が生じさせてしまう可能性が高いとしています。

エルサルバドルの「ビットコイン・シティ」の建設計画では建設資金をビットコインを担保とした債権で賄うとブケレ大統領が発表しています。ビットコイン・シティの建設予定地であるラ・ウニオンでは火山からの地熱発電を利用してビットコインのマイニングで都市を運用するため、住民からは付加価値税(VAT:日本の消費税)以外の税金は一切課さないとも述べています。

IMFはエルサルバドルの政府関係者とも定期的に協議は行っていたものの「ビットコインを担保として、債権を発行し、インフラ計画に充当する計画は全く知らない」と明らかにしており、この計画は大統領の独断専行なのか、政府内の協議でIMFとは連携しない方針を立てていた可能性があるようです。

IMFは「ビットコインの法定通貨化の警告」を行ったのは今回が初めてではなく、2021年初頭にエルサルバドルがビットコインを法定通貨とする法律が可決した際にも注意勧告を行っていました。しかし、同国はIMFの反対意見を無視して、計画を進めてきた経緯があり、今後もこのまま計画が進んでいくものと考えられます。

実際、エルサルバドルが今後、どのような道を辿るのかは不明ですが、実験的な試みとして成功するのか失敗してしまうのかを見れるというのは面白いかもしれません。失敗した際にエルサルバドルに住む人々の影響は計り知れないのですが……