100%偽雪で行われる北京オリンピック、専門家が「環境に悪いのでは」と疑問を呈す

画像: Flickr (Steve Jurvetson)

2022年2月4日から中国の北京で開催されている北京オリンピックが開催されています。このオリンピックは冬季オリンピック史上初めてオール人工雪が使用されており、天然の雪は使用されていないことが知られていますが、環境専門家は「むしろ環境影響の方が高いのではないか?」と懸念を示しているとのことです。

国際オリンピック委員会(IOC)は北京オリンピックについて、天然雪が一切存在しない点が「気がかり」であることを認めているものの、持続可能な開発の観点では意義のあるものとしています。

IOCで持続可能性ディレクターを務めるマリー・サロワ氏は「中国が北京オリンピック開催に向けて行われたことは持続可能性を考慮したウィンタースポーツを提供することに特化しています」と述べており、今大会の意義を強調。

同氏は「会場設営の観点では2008年の北京大会の会場を流用し、史上初となる100%再生可能エネルギーの利用、低炭素車両の使用、他にもCO2冷媒を使用した製氷技術などの革新的な技術の利用も行っているのです」と続けています。

しかし、北京は乾燥帯に該当し、年間の降雪量はイギリスのロンドンよりも少ないのが現状。このため、北京オリンピックは「持続可能性」を主張したうえで100%人工雪を使用したオリンピックを開催しているのですが、専門家からは環境影響を疑問視する声が上がっているようです。

フランスのストラスブール大学で水文学の研究を行っているカルメン・デ・ヨング教授によると「オリンピック期間終了後、オリンピック開催地には水の問題が発生する可能性があります」と語り、人工雪が融けたあとに問題が発生する可能性があるとのこと。

「人工雪が融けると、本来その地域の土壌では想定していない水が追加で流れることになります。当然この影響を受けたスキー場では土壌浸食などの影響がでてしまうはずです」とサロワ教授が続けています。しかし、気候変動の影響もあり、ウィンタースポーツの多くの会場で人工雪が使用されており、2014年のソチオリンピックや2018年の平昌オリンピックでも多くの人工雪が使用されていました。

このため、サロワ教授は「気候変動の影響でウィンタースポーツの多くが人工雪に頼っているのは事実ですが、今後、どの国でも同じような事態にならないようになってほしいと思います。このことから、気候変動対策の面でより強力な対応をしていかないといけないかもしれませんね」と述べ、環境保全に向けた取り組みを強める必要性を説いていました。