670万種のDNAを月にバックアップする「月の方舟」計画が立案される

災害時に備えてデータを遠隔地にバックアップするというのはテクノロジー分野では当たり前の考え方です。しかし、DNA情報等についてはノルウェーのスヴァールバル世界種子貯蔵庫のようにごく限られた場所で保管されています。そこで、今後、地球に万一のことがあった場合に備えて、月にDNA情報をバックアップしようという計画が動き出しています。

Scientists want to store DNA of 6.7 million species on the moon, just in case | Live Science

この計画は「月の方舟(Moon Arc)」計画と呼ばれ、IEEE Aerospace Conference |でアリゾナ大学で宇宙探査と地上ロボット探査の研究を行うSpaceTREx Laboratoryで所長を務めるJekan Thanga氏率いる研究チームが発表しました。同氏によると、計画を実現するのに必要な技術がまだ存在していないものの、今後30年以内には実現できるとしています。

Thanga氏はDNAバックアップの必要性について、「データの話で例えると、私達は一度保存した写真などのデータは万一の自体に備えてバックアップを作成することができます。しかし、終末論的な事態が発生した際にはバックアップデータ自体も残る保証はありません」と語り、地球上でのバックアップには限界があるとしています。

実際、DNAバックアップ自体の考え方も新しいものではなく、実際にスヴァールバル世界種子貯蔵庫で世界中の植物の遺伝子サンプルを冷凍保存しており、万一の事態に備えています。しかし、同施設も海面上昇や隕石によって破壊されてしまう可能性があります。

このため、太陽系のどこかに遺伝情報を保存するのが最も現実的であるとThanga氏が述べています。また、研究チームによると、移動難易度や安全性の面を考慮して、衛星軌道上や火星ではなく月に存在する溶岩洞に地球上の全DNAサンプル(約670万種)を保存するのが効率が良いとのことです。

課題として、「現地での施設構築場所」「施設でのロボットを使用する場合に発生する問題」「DNAサンプルの月への移送方法」等、現時点でさまざまな問題が挙がっており、研究チームは30年の期間が必要であるとしています。しかし、Thanga氏は「人類は差し迫った脅威にさらされたとき、速く物事を実現する力がある」と語り、場合によっては10年〜15年以内に実現できる可能性があるとも語っています。

ペンギン議長の一言

月面に施設を作るというのはNieR: Automataの世界を彷彿とさせますね。
ゲームディレクターのヨコオタロウさんは実際に月に何かをバックアップすることが効率的であるとはわからなかったと思いますが、似たような世界が実現されそうになっていますね。