「人類史上2例目」HIVに免疫だけで完全勝利してしまった女性が現る

HIVウイルスと言えば、エイズの原因となるウイルスで、一度体内に入り込むと排除することができないことが知られています。しかし、2013年にHIVに感染したアルゼンチン在住の女性が2021年に行われた検査で体内からHIVウイルスがほとんど消失していることが確認されました。このような事例はほとんどなく、彼女のように治療なしでHIVウイルスが排除された例は2例目とのことです。

アルゼンチンではHIV陽性の患者が差別される傾向が強いため、この女性は本人の住む地域にちなんで「エスペランサ患者」と呼ばれています。エスペランサ患者はHIV感染後、骨髄移植や薬剤による治療を受けておらず、感染から8年後の検査でHIVウイルスが体内からほとんどなくなってしまいました。同様の事例は過去に1例のみ確認されており、今回のエスペランサ患者の事例は2例目となります。

研究者たちは「Annals of Internal Medicine」の2021年11月16日付の報告で「血液などから採取した大量の細胞を分析下にも関わらず、『エスペランサ患者』の体内からHIVウイルスを見つけることはできなかった」と記載していました。しかし、報告書では「今回の検査では見つからなかっただけであり、完全に消失したと断言することはできない」と述べています。

このエスペランサ患者はHIVウイルスの増殖の抑制やウイルスを破壊する遺伝子を持つ人を表す「エリートコントローラー」と呼ばれています。記事作成時点で確認されているエリートコントローラーはHIV陽性者のうち1%程度と言われており、彼らの免疫システムの仕組みが明らかになれば、HIV感染に人類が打ち勝つことができると期待されています。

エスペランサ患者は2人目の子どもを妊娠中とのことで、現在はHIV感染のない生活を楽しんでいるそうです。しかし、彼女は「他のHIV患者にもチャンスを与えたい」と語っており、今後のHIV治療に向けて、自身の体内の遺伝子構造や免疫システムの仕組みの研究に貢献したいと述べていました。