「膨張それとも縮小?」地球の質量は年々どのように変化しているのか

毎年のように流れ星が降り注いできたり、大気が宇宙空間に放出されたりと地球は太陽系の星々と物質的なやり取りを行っています。では、実際のところ、地球の質量は年々どのように変化しているのでしょうか。NASAのラングレー研究所で大気の流出について、研究しているギヨーム・グロノフ氏が解説しています。

グロノフ氏によると、地球から宇宙空間には大気が放出されていることで年々質量が減少しているとのこと。しかし、地球自体の大きさはそこまで小さくなっていないそうです。

同氏は「惑星は宇宙の塵がたくさん衝突して大きな塊となったものです。地球は約45億年前に形成された後、その後も流れ星や隕石が落ちてくることで質量を増やしてきています」と地球の質量が増大する理由を説明しています。

しかし、惑星が形成されると次の変化として「大気の流出」が始まるそうです。「大気中の酸素や水素、ヘリウムの原子は太陽からのエネルギーを十分に吸収すると、宇宙空間へ飛び立ってしまいます。この現象はいわゆる『蒸発』と似たようなものですが、地球規模で起こるため非常に大きな量が流出するのです」とグロノフ氏は語りました。

地球には「流れ星や隕石の流入による質量増加」と「大気流出による質量減」が同時に起きていることになりますが、実際に地球の質量が年々どのように変化しているのでしょうか。

グロノフ氏は「地球の質量を高い精度で計測する方法は研究中であり、現時点ではリアルタイムに測定することはできません」と語っており、実際の地球の質量を詳細に知る方法は記事作成時点ではないとのこと。

しかし、流れ星の流入量を見ることで一定精度の計算は可能だそうで、グロノフ氏は「毎年地球には約16500トンの流れ星が落ちています。これに対して、大気の流出は年間で82700トンです。合算すると、地球は毎年約66100トンずつ縮小している計算になるのです」と説明しています。

なお、この量は地球全体から見れば非常に小さい数字だそうです。同氏は「仮に地球が大気を補充する手段がないと仮定した場合、このスピードで地球の大気が流出していくと50億年ほどで地球から完全に大気が失われる計算になります」と語りました。

しかし、地球は海や火山噴火のプロセスなどから大気を補充し続けており、これも加味したとすると「宇宙の寿命の約100倍にあたる約15兆4000億年の時間が経過しないと地球の大気が消滅しない」とグロノフ氏は結論付けています。

つまり、地球から生命がいなくなるのは「大気流出」が原因となることはなく、約50億年後と言われている太陽が赤色巨星になるころのことだろうと予想されているとのことです。