「使ってないはずでは?」AdidasやPumaなどの衣類からウイグル製の綿の痕跡が発見される

新疆ウイグル自治区に住んでいるウイグル人は記事作成時点において、中国による人権侵害の対象となっているとして欧米諸国から非難されています。多くのファッションブランドなどでは、そんな中国への制裁措置として同地域で生産される綿の調達をしないと対外的に表明しているのが現状。しかし、ドイツの研究者による調査により、ドイツのメーカーであるAdidasやPumaの衣類から新疆ウイグル自治区で生産された新疆綿の痕跡が発見されてしまったとのことです。

ドイツのユーリッヒにある食材や製品の分析機関であるAgroisolabとニーダーライン応用科学大学が行った同位体分析の結果によると、これらのブランドが製造したTシャツの綿花サンプルには「新疆ウイグル地区」製の綿花と同等の起源があるということが明らかになったそうです。

Agroisolabのマルクス・ボナー氏は「発見された綿花には新疆ウイグル自治区特有の気候や地質によって育てられた特徴を有しており、他の地域で生産してもこのような特徴を得られることはありません」と語り、新疆綿であることを示す綿が使用されていると説明しました。ちなみに、この特徴は他の綿花栽培を行っている地域のものとは明確に区別できる根拠があると同機関は報告書で述べています。

ドイツのメディアはこの調査結果を知ると、結果の公表前に該当するメーカー(Adidas、Puma、HUGO BOSS)に「新疆綿」を使用しているかコメントを求めました。すると、Adidasは「中国以外の国から独占的契約で調達しています」、Pumaは「新疆ウイグル自治区の綿花供給業者とは一切コンタクトをとっておらず、同地域から綿花は調達していません」、HUGO BOSSは「弊社は強制労働を容認しておらず、当然ながら新疆綿を使用していません」と語り、いずれのメーカーも新疆綿の使用を否定しました。

このコメントが事実の場合、新疆綿が各メーカーが契約している綿花供給業者を経由して流れている可能性がありますが、現時点ではそういった詳細は明らかになっていません。

中国にとって綿花の輸出は非常に大きな役割を担っており、特に新疆ウイグル自治区で生産される「新疆綿」は世界の供給量の84%を占めています。しかし、同地域ではイスラム教徒であるウイグル人を収容所に拘束するなど、少数民族への強制労働や人権侵害があるとされ、欧米諸国から非難されています。こういった事情からアメリカのジョー・バイデン大統領は「ウイグル人強制労働防止法」に署名し、ウイグル自治区からの綿花の輸入を禁止。欧米の衣料品ブランドも「新疆綿を使用しない」と表明していました。

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