イギリス人が「アメリカ英語」を嫌う理由

日本人の多くは英語が「イギリス英語」と「アメリカ英語」に分かれていることは知っている人と思いますが、どういった違いがあるかわからないはず。しかも、イギリス英語を話すイギリス人からすると、アメリカ英語は「汚い英語」として軽蔑の対象になっています。なぜ、そんなことになってしまったのか、イギリスのBBCが解説しています。

イギリス人の多くはアメリカ人が使う代表的な表現「Can I get 〜?(〜をいただけますか?)」が嫌いです。なぜなら、「Can I get」はアメリカ英語であり、イギリス人の立場から見れば「無価値な表現」として軽蔑しているからです。

さらに、イギリス人から見ると、アメリカ人は「honour(名誉)」のスペルを「honor」と間違え、「colour(色)」のスペルも「color」と間違えるなど、単語のスペルを正しく書けない頭の悪い人という認識です。(日本人はアメリカ英語を習うため、イギリス英語の方が間違いと感じる人が多いと思います)

しかし、これらのスペルミスは17世紀初頭にイギリス人がアメリカ大陸に渡るよりも、はるか前からイギリス国内でずっと使われてきたものでした。例えば、イギリスの歴史的にも著名な劇作家であるシェイクスピアの戯曲集「ファースト・フォリオ」には正しいイギリス英語である「honour」が400回以上出てきますが、アメリカ英語である「honor」が500回以上出てくることもわかっています。つまり、当時のイギリスではスペルミスに対して寛容であったことが伺えるのです。

それから数世紀後に金属のアルミニウムに関して、当初のイギリスはプラチナの呼称である「プラチナム」に倣って、「アルミナム(alminum)」とアメリカ英語のスペルと呼び方が採用されていました。しかし、その後は「マグネシウム」に倣って「アルミニウム(alminium)」と現在のイギリス英語のスペルに変化したのです。

このような変化はアメリカ英語の歴史でも同様であり、イギリス人が17世紀にアメリカに入植した後は必要に応じて新たな言葉を作ったり、イギリス英語を引用したりして独自に英語を進化させてきているのです。その過程でアメリカでは「foothill(山嶺の丘)」「burying the hatchet(仲直りする)」など素敵な言葉も登場しています。

このため、BBCではイギリス人に対して「単にアメリカ英語を馬鹿にするのではなく、イギリスで言葉の変化があったように、アメリカでも英語が独自の歴史をたどって発展してきた」ことを尊重すべきであるとまとめています。

実際にBBCが公開しているムービーは以下から確認することができます。

Source – BBC News