「金メダルでなければ人にあらず」中国代表選手を襲う「ナショナリストからの重圧」とは

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2021年7月23日に開幕した東京オリンピックですが、記事作成時点で中国が金メダルを32個獲得しており、2位以下を大きく引き離す大活躍をしています。そんな中、中国代表選手の多くは「すべての種目で金メダルを取るべきだ」とする中国国内のナショナリズム思想が強い人々からのプレッシャーが強くかかっており、金メダルを逃したときの反動に苦しめられているとのことです。

2021年7月26日卓球混合ダブルスにて、水谷隼選手・伊藤美誠選手のペアに敗れ、銀メダルを獲得した劉詩雯選手・許昕選手のペアは敗戦後、涙ながらにカメラの前で謝罪するという姿を見せていました。また、女子重量挙げ55キログラム級で銀メダルを獲得した廖秋雲選手はメダル確定直後に泣いてしまい、コーチも泣きながら廖選手を慰める姿を見せていたのです。

もちろん、銀メダルを獲得することは基本的に勝負に敗れることに等しいため、選手が複雑な感情を持ってしまうのは仕方ないことです。しかし、中国では金メダルを獲得できなかった選手に対して、SNSで厳しい意見を寄せられてしまう傾向があります。

このように金メダルを獲得できなかった選手が批判の的になってしまう原因として考えられているのは、中国国内でナショナリズム思想の人々の意見が強まっているのが背景にあると、複数の専門家が語っています。専門家によると、今回のオリンピックが中国にとって、政治的に対立した歴史を持つ日本で行われていることで、愛国主義が強い人々を刺激し、反日感情が強く目覚めてしまっているとのことです。このため、惜しくも金メダルを獲得できなかった選手に対して、同情的な感情がわかずに「国の恥だ!」とする論調が強くあるそうです。

選手によっては、金メダルを獲得しても批判される選手もいるようです。「女子10メートルエアライフル・射撃」で金メダルを獲得した楊倩選手は「過去のSNS上の投稿にNIKEのスニーカーのコレクション」の写真を投稿していたのです。NIKEと言えば、新疆ウイグル自治区の民族の強制労働の疑いが国際社会で叫ばれた際に、同自治区産の綿花を自社の製品に使用しないと宣言したことで、中国で不買運動が起こりました。

このため、楊選手のSNSには「中国のアスリートであれば、NIKEの靴をコレクションする必要なんかない。そもそも、お前が率先してNIKEの不買運動をすべきではないのか」など、同選手を批判する意見が大量に寄せられたとのことです。こういった発言をする人々はナショナリズム思想の強い人でも比較的若い人々です。こういった人々は中国で「リトルピンク」と呼ばれています。

こういった「リトルピンク」の人々は何年もの間「中国政府に批判的な意見」を封殺するのに一役買っていました。しかし、中国政府としては2022年に北京オリンピックの開催を控えていることもあり、東京オリンピックに対して批判的な意見を言うことはできません。このため、政府はリトルピンクの発言を批判する立場を取っていることから、今後、政府とリトルピンクの間に生まれた「しこり」が大きな混乱を生む可能性を危惧する声が出てきているようです。