「宇宙はなぜ暗く見えるのか?」光が少ないわけではなく「ただ見えてないだけ」との説が濃厚

夜空を見上げると、月や銀河などの星々がところどころ煌めいていますが、これらの星々を囲っている宇宙空間は暗闇に見えます。しかし、なぜ宇宙が暗闇(黒色)に見えるのか考える人がいても、多くは「光が少ないだけでしょ」と考えがちです。この意見に対して、科学者たちは「光が少ないのではなく、光が見えてないだけの可能性が高い」と語っています。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校の大学院生で天文学および天体物理学の研究を行っているテンリー・ハッチンソン・スミス氏は「私たちの銀河系には何十億もの星が存在します。そして、そんな銀河系も宇宙には何十億と存在し、光を反射する惑星なども無数にあるため、宇宙は明るいと感じがちです」と語り、宇宙空間上には光を反射する物体が多く存在するにも関わらず「宇宙は暗い」と語っています。

この現象はオルバースのパラドックスとして知られている矛盾の1つです。このパラドックスが発生する原因として考えられることとして、ハッチンソン・スミス氏は「宇宙の膨張速度」で説明がつくとしています。宇宙の膨張は光速より速いスピードで膨張しているので、遠くにある銀河の光も引き伸ばされてしまいます。この結果、可視光線であっても「赤外線」「マイクロ波」「電波」といった目に見えない不可視光線になってしまうという考え方です。当然、光が目に見えないということは「暗闇」になるということです。

同校の大学院生であるミランダ・アプフェル氏は「宇宙空間にある星はあらゆる色の光を放っており、不可視光線に該当する『紫外線』『赤外線』のような光も放ちます。もし、私たちが『不可視光線』を見ることができたなら、宇宙空間は光り輝いた空間であることは間違いありません」と語り、ハッチンソン・スミス氏の意見に同意しました。アプフェル氏は「宇宙マイクロ波背景放射(ビッグバンによる光エネルギー)」が今でも宇宙空間を満たしていることから、このように考えられるとしています。

また、宇宙空間が黒く見えてしまう「もう一つの理由」として考えられるのが、宇宙がほぼ真空であるということです。例えば地球を構成する大気の大部分は「窒素」と「酸素」で、これらの分子は太陽光を反射する際に青や紫色の波長をもつ光を多く放つことから青く見えます。しかし、真空中には光を反射する粒子が非常に少なくなるため、星と星の間の空間は「黒色」に見えてしまうのです。

しかし、2021年に「The Astrophysical Journal」に掲載された研究によると、宇宙は「意外と黒くない」かもしれないことが明らかになりました。この研究では宇宙空間にある探査機が撮影した画像から「既知の星や銀河の光」や「カメラが発する光」を全て取り除き、宇宙の色を分析したところ「宇宙は想定の2倍ほど明るい」ということがわかったそうです。しかし、この明るさの原因は不明であり、今後も研究が必要ですが、1つ言えることは「宇宙は真っ黒ではない」ということだけです。