日本では所持するだけで違法ですが、大麻(マリファナ)はアメリカの約3分の1の州をはじめとした多くの地域で合法化されています。しかし、女子陸上史上6番目に速いことで知られ、2021年の東京オリンピックに100メートル走に出場予定であったシャカリ・リチャードソン選手は大麻の陽性反応が出たとして、出場禁止の処分を受けました。なぜ大麻がオリンピックで禁止薬物に指定されているのかBBCが解説しています。
大麻は世界アンチ・ドーピング機関(WADA)が2004年に作成した禁止薬物リストに指定されたのをきっかけに禁止されることになりました。このリストに掲載される基準として「アスリートの健康を損ねるもの」「パフォーマンスを向上させるもの」「スポーツ精神に反するもの」の3つの基準があり、これらのうち2つ以上に該当すると禁止薬物として認定されるとのこと。
大麻は「パフォーマンスを向上させるもの」「スポーツ精神に反するもの」の2点に該当しているため、禁止薬物として認定されています。WADAは大麻のパフォーマンス向上効果について、「大麻特有のリラックス(不安軽減)効果がアスリートにポジティブなパフォーマンスを生むことにつながる」としています。しかし、2021年にカナダのケベック大学の身体活動学の教授を務めるアラン・スティーブ・コンテ氏らが発表した論文で「大麻が運動能力を引き上げる効果がない」と指摘されています。
コンテ氏によると、「確かに不安解消効果はありますが、大麻は血圧を上昇させたり、体力や平衡感覚を低下させたりする効果があるため、運動能力を高める効果はありません」と語り、アスリートが大麻を使用することにメリットはないようです。このため、実際問題としてWADAの指摘する「パフォーマンス向上効果」はないというのが記事作成時点での評価となっています。
また、WADAは大麻使用を世界中の若者の模範とならないということから「スポーツ精神に反するもの」としています。これについては禁止薬物リストが作成された2004年当時の情勢が大きく影響していると見られています。当時は世界中の国で大麻が違法とされてきましたが、2013年にウルグアイで合法化されて以降、2018年にはカナダ、それ以降は南アフリカ、オーストラリア、スペイン、オランダなど多くの国で合法化されています。そしてアメリカでは約3分の1の州で合法化されているのです。
また、医療目的での大麻使用についても、イギリスをはじめとする多くの国で認められてきており、記事作成時点では日本でも近く医療目的での使用が解禁される見込みとなっています。このような状況から「大麻を禁止薬物として認定するのはどうなのか?」という議論が噴出するのは当然であり、将来的には見直される可能性がWADAでも示唆されているのです。