「海面上昇だけじゃない!」沿岸部の都市に住むのが危険な理由とは?

「眼前に広がる海を眺めていたい」などの理由から沿岸部に住むことに憧れをもっている人がいるはずです。もちろん、気候変動による海面上昇や2011年に発生した東日本大震災で沿岸部に住むことに危うさを感じている人もいるのも事実。しかし、これらの原因以外にもう一つ大きな危険因子として地盤沈下が挙げられており、この危険性についてGeophysical Research Lettersに投稿された研究論文で明らかにされたとのことです。

地盤沈下とは地中の物質がどこかに移動したり、取り除かれたりした結果、地表が徐々にもしくは突然大きく沈むことです。この地盤沈下の大きな原因とされているものが「採掘」や「(無秩序な)地下水の汲み上げ」によるものだそうです。実際、研究チームは2015年から2020年の間に沿岸部にある99の都市で発生している地盤沈下を測定。

すると、アジアの都市が最もリスクが高いことが判明しており、また、アフリカやオーストラリア、ヨーロッパ、アメリカでも急激な地盤沈下が観測されています。特に中国の天津、インドネシアのスマラン、ジャカルタにおいては1年に約3センチメートルほどのペースで地盤沈下が進んでおり、このスピードは世界の平均海面上昇速度の15倍に相当。イギリスBBCの報道によると、地盤沈下の影響で世界で最も速く海底に沈没する都市として「ジャカルタ」が挙げられているとのことです。

今回の調査対象の99都市とのうち、約3分の1の都市は年間約1センチメートルのスピードで地盤沈下が進んでいることも明らかとなっており、多くの都市が危険な状況に陥りつつあるようです。特に工業地帯や住宅地の多い都市が地盤沈下のスピードが高い傾向があり、政府による緊急の対応が求められているのも事実です。

しかし、こういった現状によりインドネシアや中国では地下水の汲み上げを規制による制限を加えるようになっており、最もリスクの高い都市として挙がっているジャカルタや上海などの都市では地盤沈下の速度を劇的に遅らせる取り組みが行われており、その結果も出始めているとのことです。