「サッカーを救いたい」欧州スーパーリーグ会長の発言に批判殺到

ヨーロッパで最も盛り上がっているスポーツといえば「サッカー」です。しかし、2020年初頭から本格化したコロナ禍の影響で、観客数が激減し収益が悪化するクラブチームが跡を絶ちません。そんな中、ヨーロッパを代表するクラブチームの1つである「レアル・マドリー」の会長を務めるフロレンティーノ・ペレス氏が掲げた「欧州スーパーリーグ構想」に批判が殺到しています。

欧州スーパーリーグとはヨーロッパを代表するチームが一同に介して、独自のリーグ戦を行うというものです。記事作成時点で参加を表明しているチームは「レアル・マドリー」「バルセロナ」「アトレティコ・マドリー」「インテル」「ACミラン」「ユヴェントス」「アーセナル」「チェルシー」「リヴァプール」「マンチェスター・シティ」「マンチェスター・ユナイテッド」「トッテナム」の12チームで、いずれも歴史もあり、チーム力もヨーロッパでトップクラスの超一流のクラブチームです。

しかし、ヨーロッパには欧州サッカー連盟(UEFA)が主催する「ヨーロッパチャンピオンズリーグ」という大会があります。これはヨーロッパでNo.1チームを決めるための大会であり、毎年行われているものです。また、国際サッカー連盟(FIFA)が主催するクラブワールドカップと呼ばれる世界No.1のクラブチームを決める大会も存在しています。

このため、当然、大会の意義を大きく損なうことになるUEFAおよびFIFAの会長は同大会について批判的な立場を掲げており、「欧州スーパーリーグ」に参加するチームには同連盟が主催する大会や同国のリーグ戦からの追放処分や所属選手には出身国の代表として試合に参加する資格のはく奪を示唆する発言をしています。

これに対して欧州スーパーリーグを構想したペレス氏は「サッカーという競技を救うために構想した大会だ」と発言しています。同氏は「コロナ禍で多くのクラブチームが資金を失いました。このため、観客を取り戻すには、高いレベルのチームが一同に会し、高いレベルの試合を見せることが重要なのです」と語り、クオリティの高い試合を沢山実施することでサッカー人気を加熱させ、結果として全クラブチームの収益を確保したいとの意向を示しています。

しかし、この発言に対して、「短絡的だ」との見方が多いのも事実です。イギリスのボリス・ジョンソン首相は「すべての町や都市、サッカーというピラミッドの全ての階層に位置するクラブチームは地域社会を構成するものであり、地元の誇りを大事にしています。下位チームが強豪チームを下すためには、どのチームも平等な練習環境を持っていることが前提なのです」と語り、特定のチームが得をするのではなく、全てのチームに平等な機会が与えられるべきだとしています。

元イングランド代表でエースナンバーの7番を背負い、世界的な人気選手でもあったデイビッド・ベッカム氏はInstagramで「サッカーは公平でなくてはならない」と語っており、一部のチームだけが大きな収益を確保できてしまう大会の実施については批判的な立場を示しています。これ以外にもドイツの強豪クラブチームの「ドルトムント」を率いるクロップ監督など同様の意見は大多数を占めているのが現状です。

実際、欧州スーパーリーグが実現するかはかなり不透明な状況ではありますが、本当に実施が決まった場合には「強豪チームから選手の大量離脱」など様々な動きが生じると思われます。