記事作成時点の日本での一般の人向けの新型コロナワクチンの接種はこれからスタートするところですが、海外では一部の国で既に接種が開始しています。2回のワクチン接種完了後には「ワクチン接種済み」であることを示すワクチンカード(ワクチンパスポート)が配布され、旅行などに出る際の「必須アイテム」として活用されることが予想されます。しかし、このワクチンカードが簡単に偽造できてしまうことが明らかになりました。
VICEの記者であるジョゼフ・コックス氏はワクチン接種を受けたことを示す「ワクチンカード」を持っています。カードには同氏の名前が記入されていますが、彼は2度のワクチン接種は行っていません。つまり、コックス氏が持っているカードは偽物です。
ちなみに、コックス氏は危ない世界のバイヤーと取引をして偽造ワクチンカードを手に入れたわけではなく、「ハンドメイド商品」の通販サイトEtsyで販売されているワクチンカードを購入しただけです。Etsyで販売されているワクチンカードは一般に配布される紙製のものとは異なり、金属製で丈夫なものになっており、持ち運びを便利にするために販売されているものとのこと。
当然、販売されているカードを購入するには本物のワクチンカードが必要です。コックス氏はEtsyで発注後に出品者から「あなたのワクチンカードの写真を送ってください」との依頼があったとのこと。しかし、コックス氏はワクチンカードを持っていないため、写真を送信せずに、「自身の名前」「偽の誕生日」「コックス氏の知人の持つカードに記載のワクチン接種情報(接種日時、摂取量、医療機関等)」を入力して送信。その後、発注から2週間で偽物のワクチンカードが送られてきたそうです。(送信したワクチン接種情報は知人の同意済みのもの)
画像: 偽造ワクチンカード(Motherboard)
つまり、本人情報は「偽物」でも、ワクチン接種情報は「本物」の偽造ワクチンカードをコックス氏が入手できてしまったのです。これを用いれば、2度のワクチン接種者でしか行けないような場所でも、簡単に行けるようになってしまい、さらなるパンデミックを引き起こす可能性が考えられます。
なお、Etsyでは新型コロナウイルスに関する出品に関しては厳しくチェックしており、金属製カードの出品者の情報についても、公開から1時間以内に削除されていることが、VICEの取材で明らかになっています。
また、公式な政府機関の印章を無断で使用することも禁止されているため、偽造ワクチンカードにはこれらの印章も印刷されていません。また、紙質も異なるため、カードを発行する関係者が見れば「偽物」と判断するのは容易なはずです。
しかし、一般のお店や施設では「どこまでのレベルでチェックできるか」は未知数です。仮に偽造ワクチンカードが紙製で偽物の印象も印刷されていたとしたら、おそらくカードを見ただけで、偽物と見抜ける人はほぼいないでしょう。また、こういった施設にワクチン接種情報を詳細にチェックする仕組みを導入するのも難しいと考えられ、ワクチンカードの偽造対策については課題が山積しているのが現状です。